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2007.10.14

家族、旅立つ。

Photoあの酷暑もヨソの国のことかと思えるほど涼しくなってきた。その季節とともに期も変わり、新たな仕事の仕込みに奔走する先週、ここ三ヶ月ほど病床に伏せていた義理の父が息を引き取った。多発性骨髄腫という原因も治療方法も不明な血液のガン。精神的、身体的な苦痛を軽減することしか施しようのない難病だったことと、80歳という高齢でもあったことで、寧ろこれ以上長引かなかったことが、当人と家族にとって仕合わせなのではないか、と思えるほど、最期は凄惨な状況だった。

Photo_2死去の翌晩、納棺の日の若い女性納棺士の見事な手捌きに心底畏れ入り、一昨日そして昨日の通夜と告別式における儀式進行の手際の良さに感じ入る。考えてみれば、人が死ぬ、という、それこそ有史以前からひとの数だけ起こってきた事象に対するセレモニーは、宗教的なしきたりや文化的要素が影響し、多少の演出の差があるかも知れない。が、縁の深いひとが集い、死者との最期の別れを惜しみ、あの世へ見送るという一連の基本シナリオは、古今東西大差ないのだろう。
今回、義父の遺言もあったことで、宗教色を排除した、読経や戒名などもない、自由葬と呼ばれるシンプルなメニューと設えだったことも加わり、そんな古来からの葬儀定番項目の殆ど要所のみで構成された儀式は、ウェットに仕立てられがちな演出はじめ大仰なところのない、温かなセレモニーだった。

Photo_3ワタシと10年にも満たない付き合いだった義父は、観世流の流れを汲むと言われる日本舞踊の大妻流という流派に12歳のときに入門。終戦直後にその流派を継ぐ傍らで、古典舞に始まり、歌舞伎舞踊、常磐津、義太夫、長唄、端唄、浪曲、謡曲、尺八、創作舞踊、最近では新舞踊と言われる、レコード会社とタイアップした舞台演出の一環としての振り付けを手掛けるなど、日本の古典舞台芸能の幅広いメニューを器用にこなす、プロの芸人だった。晩年は、岩手の遠野に稽古場を開き精力的に活動していて、ワタシも同地を何度か訪れた。
ワタシの連れを初め、義父の一家は日舞が日常の家族であり、ワタシの暮らしてきた文化と全く異なる世界がそこここにあり当初は振る舞い方に戸惑う場面も少なからずあった。が、自分のシュミが少しでも役立てばと「舞台写真班」としてのポジションを貰ってからは距離も縮まり、呼吸も合ってきた矢先の罹病と死去だったことは悔やまれる。

Photo_4遥かムカシに世を去った祖父と実父と同様にワタシを“呼びすて”にしてくれた、唯一かつ最後の家族の旅立ちでもあった。

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コメント

お義父さまのご冥福をお祈りします。

いい写真班を得て、お幸せな晩年だったのではないかと想像します。

投稿: negi | 2007.10.14 23:21

negiさん
コメント感謝&ご無沙汰です。今も写真班から脱皮できません。
高校の卒業アルバム制作チームの頃から成長してません・・・

投稿: zap | 2007.10.14 23:35

父上のご冥福をお祈り申し上げます。
続きをあれこれ書いてみたけど、ふさわしい言葉が何にも出て来ず、書いては消し、書いては消し、の連続でした。

それにしても4枚目の写真ですが、不祝儀の時に写真を撮るのは少なからず勇気が要るんですよね・・・私は自分の父親の葬儀にレンズを向けることができず、「写真班」には全くなれませんでした。

投稿: 赤壁周庵 | 2007.10.15 05:56

赤壁周庵さん。
毎度コメント感謝です。ご指摘どおり、不祝儀の撮影は本来慎むべきなのでしょう。
家族の密葬ということもあって、ワタシ以外の誰もカメラをとりだす人はいませんでした。
一方で、丁度隣の部屋で執り行われていた別の葬儀では、
大勢の参列者の中から何人もがバシャバシャやっていたのが印象的でした。

投稿: zap | 2007.10.16 00:29

御苦労さまでしたね

 親の死に目には誰でも対応しないといけませんね。しかし、10年間も実の親の如く指導して下さった訳だから、感謝しましょうね。

これからは、指導してくれる人がいなくなり、自分が指導しないといけない世界ですね。還暦も過ぎると何でも受け入れる気持ちが強くなっていますよ。

 これからも頑張りましょう。元気を出して宴会しませう。

投稿: jo | 2007.10.17 19:46

joさん
義父は酒は一切呑みませんでしたが、宴会の達人でした。元気だして宴会。これがキホン、ですね!

投稿: zap | 2007.10.18 01:16

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