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2007.05.13

シズル感。

Photo_15ニンゲンの臓器のなかで唯一外気に晒されているのが「目玉」なんだそうだ。
眼は脳に直結した“出先器官”として機能していることもあって、ニンゲンが外界の情報を採り入れるための知覚=いわゆる五感の中で、処理される情報量は断トツに大きいとか。
確かに、ワレワレ普段の生活において、とくに仕事に臨む場合など、視覚はとても重要な働きをしていることは実感できる。一方で、眼は「都合のよいように見る」という面白いクセがあるらしい。

例えば、会ったことのない人の写真を見て感じていた印象と、その後その人と実際に会って受ける印象が異なる、なんてことがある。これは、カメラのレンズという、一点から写しとって紙に焼き付けた画像を単に見た場合に較べ、二つの眼で立体的に捉えたとき「自分にとってより望ましい実体」として認識しようとするチカラが自然に働くからなんだそうだ。つまり、写真で見て感じていたよりも「意外にカワイイ」とか「結構ハンサム」なんて感じることの方が、その逆よりも多いんだとか。

さらに視覚は、見ている対象を「こうに違いない」という気持ちで見ると実際にそのように見える、という作用も働くらしい。雲のカタチが何かの物体に見えたり、木目や岩の模様が何やらヒトのように見えたりして「ワタシは確かに見た!」なんてことがあるとすれば、それは「思い」というバイアスが働いてそう感じ取ってしまった、ということなんだろう。
いずれにしても、眼で見るときの情報量の多さは、必ずしも知覚の正確さを齎しているとは限らない、ということのようだ。

この視覚の特性を逆手にとれば、例えば、食べ物の写真がリアルかつ活き活きと写されていればいるほど、人はその食べ物に対して実際以上の瑞々しさや美味しさを「望ましいこと」として感じ取ることができるし、同様の感覚を人物や風景の写真を見るときにも抱けるのではないかと思う。

Photo_16被写体がリアルで活き活きと写しだされている写真。広告やデザイン制作の現場ではたまに「シズル感」という表現を用いるが、この、五感とくに視覚をキモチよく刺戟する感覚という意味の言葉の本質はとても重要だ。
カメラ、オーディオ、ビデオ、放送・・・デジタル技術が進んで知覚や認知を扶けてくれるモノやサービスが世に氾濫しているが、この「シズル感」を損なわずにニンゲンの感覚に快い刺戟を与えてくれる道具は未だそんなに多くはないように思える。

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コメント

「シズル感」って、ずいぶん昔、やはり広告がらみで聞いたのが最初だった記憶があります。本当においしいかどうかは別として、おいしそう、に食べ物を見せる方法の話で出てきた。みずみずしいイチゴに見せるために、とんでもないものを塗る、とか、お腹の鳴りそうなラーメンに見せるため、とんでもないものを入れるとか。

別に、そんなに悪い意味ばかりこもった言葉じゃないんだけど、どうしてもこの時の印象を思い出しちゃうのよね。単に「よだれの出そうな」って意味でいいんだけど。

そうそう、視覚について、たまたま今日友達に教えてもらったURL置いて行きますね。一日に二度、同じことを考える日もあるのだなあ、と。

http://www.youtube.com/watch?v=voAntzB7EwE

投稿: negi | 2007.05.13 19:58

negiさん。少しご無沙汰でした。
何年か前、ブツ撮りの巧いスタジオカメラマンに聞いたハナシ。
寿司を美味しそうに見せるために、マグロの上に溶かしバターを塗って
固まらないうちに撮影するんだとか。これはこれで旨かったりしてね。

投稿: zap | 2007.05.13 23:38

ご無沙汰しております。
規則正しい定期更新を、いつも楽しく読ませてもらっています。

シズル感ってそういう意味だったのですね。
実は、ライター講座に通った時に、プロのライターの方が、いい記事を書くにはという話で、
「最後はシズル感で勝負かな」と言われて、どういう意味ですか?と聞いても、明解な答えとして伝わらなかったんです。
その後、ずーッと何なのだろうと思っていたので、すごく勉強になりました。感じとらせる記事。
そうだったのかぁ。

ちなみに、制作が遅れましたが、例の本はただ今印刷中です。
今週末には献本できるかもしれません。
その節は、本当にありがとうございました!!

投稿: あこぶー | 2007.05.14 00:19

あこぶーさん。コメントありがとうございます。
ライターとしてご活躍の様子、なによりです。
シズルっていうのは、揚げ物とかがジャーっと言うときの音を表しているんだそうで、
シズル感は「美味しそうな音」という臨場感を謂ったもののようです。
でも語感自体はあまりキレイじゃないですね。
そう言えば、シズラーというレストランがありました。(あまりカンケイないか・・・)
ところで「献本」だなんて光栄です。こちらこそ拙文ご採用いただき、感謝です!

投稿: zap | 2007.05.14 01:08

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