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2006.09.18

発電所を旅して思うこと。

Dscn1741何となく気になる場所、行ってみたい方面というのがある。歴史が好きな人なら古都やら名刹、山好きなら百名山とか、各々好みのテーマやその度合いによって旅するエリアが決まるように思う。ワタシの場合、旅への動機づけの多くは、単にバイクやクルマをコロがして気分のいい路を走れるとか、良い湯の湧く鄙びた温泉だとか、場末ながらも感動的な酒肴が気分良く味わえる、とかであって、言ってみれば旅への志レベルが余り高いとは言えない。が、この週末訪れた所は、そんな普段の旅へのテーマ感と少し異なるところでかなり以前から気になる場所だった。

黒部峡谷。3,000メートル級の峨々と聳えるいくつかの山に囲まれた深い渓谷。日本有数の豪雪地帯を貫くこの黒部川を取り巻くエリアは、豊富な水量により、古くから大きな発電所が何基も置かれたところであり、「くろよん」の通称で知る人も多い黒部川第四発電所とそこへ水を送り込むために関西電力により昭和36年に造られた黒部ダムがある場所だ。

Dscn1766今でこそ、全発電量の1割に満たない水力発電だが、火力や原子力発電のための燃料が自前で充分に賄えない日本では、それらの設置が国家的な喫緊事だった。戦後の電力需要増に対し、緊急事態という大儀の基で計画された黒部ダムの建設は、急峻な地形や厳しい自然環境に阻まれる訳だが、莫大な費用と歳月、そして携わった多くの人命と引き換えに完成。今以て大出力を放つこの発電施設は、世界的にも巨大な建造物として、見る者を唯々圧倒する。
勿論、ダムそれ自体の大掛かりな様子にも増して、自然の中にそんなモノを設置しようと思い立った人、そして事業として遂行した関係者の執念にも畏れ入る。一方、その建設目的に険しい山や硬い岩盤を切り拓いて人員や資材を運搬するため敷設した鉄道や数多くの坑道は、その執念の一端を知ることができるという意味においても感動的だ。

Dscn1720今では「黒部峡谷鉄道」や「立山・黒部アルペンルート」として多くの観光客を集める目玉となっている。ワタシも一介の鉄道ファンとして、軌道幅が762ミリ、いわゆるナローゲージのトロッコ電車やら、山中の長いトンネルを抜けるケーブルカーやトロリーバス、そしてそれら愛すべき車輛たちが往く周囲の自然景観は、一度は体感したいと思っていた。そして今回、駆け足ながらも実際に行ってみれば、その期待に違わない経験をさせてくれる素晴らしい場所だと思った。

が、それらとは別に思い至ったこと。それは、発電という極めて明快な目的があったとは言え、こうまでして莫大な人的・費用的リソースを注ぎ込み造らなければならなかった「大儀」とは何だったんだろうか、ということだ。ダム築堤脇に置かれた殉職者の碑には、その建造で命を落とした400近い数の人名が掲げられているのだが、そんな大儀の基に死んでいった作業員達自身のモチベーションとは、一体何だったんだろう、なんて思う。

本来の目的とは全く異なる目的で機能するトロッコ鉄道やら山岳トンネルが、巨大ダムとともに観光資源として大勢の楽しげな客を集める様子。それが、建造に関わった大勢の人達の思いとは全く別の世界で起こっている絵空事のように映るのは何故か。

Dscn1711Dscn1724そんな事を思いながら、アルペンルート接続の合間に立山・室堂近くの山道を散策していると、訪れる観光客の殆どがまず目にすることはないと聞いていた雷鳥や小型のイタチのような「おこじょ」を至近で見る。普段なら、このカワイイ小動物に出会えて観光客として「儲けた気分」を味わえばよさそうなモンだが、過酷な大自然に対するニンゲンの「大儀」や「執念」を気に掛けつつ彼らを見ていると、ある意味不思議な体験にすら思えてしまう、秋の旅だった。

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コメント

黒部ダム

 400名も工事関係で亡くなられましたか?凄まじい工事だったんですね?富山からのトロッコルートや扇沢からのダンプルートとか、トンネル工事で沢山亡くなられたんでしょうかね?

 これは、一つの戦いだったんでしょうね。私は出来たあとに学生時代、何回も北アルプスから黒部湖に下山しました。赤牛、水晶岳とかから下山しました、そして針の木沢で魚を釣りました。

 立山の室堂の雷鳥は足元が既に白いですね?もうすぐ冬が来るからでしょうか?立山はもう冬がそこまで来てるんでしょうね?昔は、自分の足で登りましたよ!(笑)

投稿: jo | 2006.09.19 14:52

joさん、コメントありがとうございます。
とにかく黒部ダムにはいろんな意味で感じ入りました。
すごくエグイ譬えですが、大儀さえあれば何百人の殉職者もやむなし、というのはまるで古代の「人柱」に対する感覚と殆ど変わらないのではないか、なんて。
ワタシは、ゲゲゲの鬼太郎を読むとき以外、その手の感性にはまるで縁がない人間ですが、黒部ゾーンにはひたすら妖気のようなモノを感じましたね~ これほんとデス。

投稿: zap | 2006.09.20 00:44

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